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名古屋家庭裁判所 昭和34年(家)1879号 審判

国籍 アメリカ合衆国 住所 アメリカ合衆国インデアナ州 居所 名古屋市

申立人 トーマス・アレクサンダー(仮名)

本籍 名古屋市 住所 名古屋市

事件本人 戸川小夜子(仮名)

主文

本件申立を却下する。

理由

申立人はアメリカ合衆国インデイアナ州に住所を有するアメリカ合衆国人であり、事件本人は昭和二十一年十一月○○日日本において日本人を母として出生し現に名古屋市に居住する未成年者たる日本人である。

申立人は、事件本人の幸福のため、事件本人の母の同意を得て、事件本人を養子として養育せんがため、事件本人を養子とする縁組許可の審判の申立に及んだ。

依つて、当裁判所は調査官高柳寿男による調査報告書及び申立人提出の戸籍謄本並びにアメリカ合衆国インデイアナ州の養子縁組に関する国際私法、日本国法例、日本国民法等の法規を参照検討してこれが判断をなす。養子縁組に関する法例第十九条によれば、養子縁組の要件は各当事者に付き其本国法に依るべきところ、申立人の本国たるアメリカ合衆国はいわゆる不統一法国であるが申立人はインデイアナ州に住所を有することが認められるので、申立人の本国法としてはインデイアナ州法を適用し、事件本人の本国法としては日本法を適用すべきであると考えられる。しかるに、インデイアナ州の養子縁組に関する国際私法によれば、養子縁組の管轄権は養子または養親の住所のいずれにも認められ、その準拠法は当該管轄権が存する国の法、即ち養子または養親の一方の住所が存する法廷地の法であるとされているところ、事件本人は名古屋市に住所を有することが認められ、かつインデイアナ州国際私法上日本法を適用することがなんら公序に反しないから法例第二十九条により、反致が認められ、本件養子縁組の要件に関しては一切日本法によるべきものとなる。しかるに、事件本人は、その提出にかかる戸籍謄本の記載によれば、申立人の直系卑属(非嫡出子)であることが認められるところ、民法第七百九十八条但書によれば、自己の直系卑属を養子とするには家庭裁判所の許可を得ずして、その縁組が有効に成立するものであることは明白であるので、本件申立人が事件本人を養子とするには当裁判所の許可を要しないものと判断する。

以上の理由により、当裁判所は本件申立はなんら根拠のないものとして右主文の通り審判する。

(家事審判官 松村勝俊)

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